冷涼な風、澄んだ水……いにしえより人々の暮らしに自然の恵みをもたらしてきた白山。夏でも白く輝くその姿に、人々は感謝と畏敬の心をこめ、信仰の対象にもしてきたのです。白山比咩神社(石川県)の創建も古く、崇神天皇の頃(紀元前)と伝えられることから、悠久の歴史がうかがえることでしょう。
時は下り、奈良時代、越前国(福井県)の僧・泰澄が、天空に現れた貴女(白山神)のお告げを受けて、養老元(717)年に白山の登頂を果たし、修行し、白山の神々の姿を感じ見たといわれています。そして、それまで白山を遠くから遥拝していた人々が、山頂へ登る登拝という祈りの形への移行のきっかけももたらしたのです。「霊峰白山には神仏が坐す」――禅頂と呼ばれる頂上へ至る修行の道。それが禅定道なのです。三方向から整備された禅定道の起点を馬場といい、現在の「白山比咩神社」「長滝白山神社・白山長瀧寺」「平泉寺白山神社」で、平安時代の末頃には「三馬場」とよばれ、白山信仰の崇敬者たちが集まり、登拝していたそうです。
霊峰白山の頂を目指す、
祈りのこころ
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加賀・美濃・越前
3つの禅定道が導く頂上現在の白山登山道のもととなっている部分が多い3つの禅定道。当時は神仏習合の時代であったこと、そして山岳信仰もあったことから、神と仏が融合しているのも白山信仰の特質。さらに山頂を極楽浄土と見立てた「生まれ清まる」の願いから、魂が帰る新たに生まれる場所として、還暦や厄落としなど人生の節目に登山する動きもできたそうです。もし、白山へ登るなら、どのルートを選びましょうか。
白山比咩神社
御鎮座2000年を超え、全国に3000社余りある「白山神社(はくさんじんじゃ)」の総本宮で、加賀一ノ宮。菊理媛尊とともに伊弉諾尊・伊弉冉尊もお祀りし、菊理媛尊は結びの神として崇敬を受け、地元からは親しみを込めて「しらやまさん」と呼ばれています。境内は白山からの水が川となって流れ、澄んだ空気に満ちています。
石川県白山市三宮町ニ105-1
Tel.076-272-0680
開館時間 / 境内自由、宝物館 9:00〜16:00 (11月は9:30
〜15:30)
料金 / 宝物入館300円(12〜3月休館)
交通 / 一の宮バス停から徒歩5分
駐車場 / 無料
長滝白山神社・白山長瀧寺
もとはひとつの社寺で、明治の神仏分離令前までは、「白山中宮長瀧寺」と呼ばれていました。発令後も神仏習合の形態をそのままに、岐阜における白山信仰の中心となっています。ご祭神は菊理媛尊・伊弉諾尊・伊弉冉尊。明治32(1899)年の大火の際にも、白山信仰を伝える宝物は住民の努力により焼失を免れ、現存しています。
岐阜県郡上市白鳥町長滝91
Tel.0575-85-2663(白山文化博物館)
開館時間 / 境内自由 常時拝観可能
交通 / 長良川鉄道白山長滝駅からすぐ
駐車場 / 無料
平泉寺白山神社
広大な境内をおおう苔のじゅうたんと杉木立、参道に佇む結界石と拝殿へと続く石畳道。境内には泰澄が白山への道中に発見し、神のお告げを受けた「御手洗池」が、現在もこんこんと湧き出ています。中世には北陸有数の宗教都市として栄えましたが、天正2(1574)年の一向一揆の争乱で全山焼失。現在も発掘が進められています。
福井県勝山市平泉寺町平泉寺56-63
Tel.0779-88-1591
開館時間 / 境内自由
料金 / 旧玄成院庭園入園料50円
交通 / 中部縦貫自動車道勝山ICから車で15分
駐車場 / 無料
泰澄寺
泰澄の生誕地に建つ寺には、産湯に使われた「産湯の池」や修行に使った「座禅石」、落雷を封じた「雷の池」など泰澄ゆかりの史跡が残されています。大師堂の中には白山開山前、35歳の時に両親のために彫った泰澄の自像が安置それ、本尊の十一面観世音菩薩も泰澄作と伝えられています。
福井県福井市三十八社町11-12
Tel.0776-38-0904
開館時間 / 境内自由
交通 / 北陸自動車道福井ICから車で25分
駐車場 / 無料
越知山大谷寺
泰澄が少年時代に入山・修行した越知山にあり、また泰澄が神護景雲元(767)年に86歳で遷化した地に建つ古刹。ここを本拠地として、泰澄自ら仏像を彫って越知山三所大権現として安置し、創建されました。境内には泰澄の墓と伝えられる九重の石塔があり、国の重要文化財に指定されています。
福井県越前町大谷寺42-4-1
Tel.0778-34-5045
開館時間 / 境内自由
交通 / 北陸自動車道鯖江ICから車で35分
駐車場 / 無料
※白山信仰には諸説あります